アメリカの精神分析家で催眠療法家だったワトキンス夫妻が開発した自我状態療法では、人間の心はいくつかの「パーツ」(部分)あるいは「自我状態」から成っていると考えます。そう言うと解離性同一性障害(昔で言う多重人格性障害)のような極端な例を思い浮かべてしまいますが、実は普通の健康な人にも当てはまることなのです。例えば、職場では堅物で知られるサラリーマンが、家に帰って子供やペットの前では赤ちゃん言葉で喋っているとすると、その人は職場と家で違うパーツを前面に出していることになります。一人の人間の中のいろいろなパーツの間で、人生に何を望むかについて矛盾が生じると、その人は葛藤を解決できずに神経症的な状態になって、いろいろな症状を呈することになるかもしれません。自我状態療法は、そうしたパーツ間の対話を促進する方法であり、心の葛藤の解決や、原因の分からない体の症状の解消に役立つかもしれません。なお、パーツの間に記憶の障壁がある場合は「解離」という状態であり、パーツが入れ替わる前後で記憶が失われ、「健忘」症状を残します。自我状態療法は解離性障害の治療としてももちろん力を発揮します。